複数のサンプル間で、タンパク質の種類と量を比較したい。そんな時これまでどうしていたかというと、2つのサンプルずつ二次元電気泳動をし、選択したスポット毎にLC/MS/MS測定をするという方法だったのではないだろうか。これからご紹介するのは、一度に最大8つのサンプル比較ができる画期的な測定法だ。

4種類もしくは8種類のサンプルに含まれる数百から数千のタンパク質の同定と定量を一度に行うことのできる解析手法。AB SCIEX社のiTRAQ試薬を用いて標識し、2段階のMS解析を行い、得られたデータをデータベースと比較することで解析できる。詳しい原理は「iTRAQの試薬・原理について詳しく知る」参照。
例えば、細胞に薬剤刺激をしてからのタイムコースを追ってサンプルを回収し細胞増殖や細胞死に関わるタンパク質の発現量比較をしたり、マウスの病態ステージの違いによりシグナル伝達系のタンパク質の発現がどのように変動していくのかを、一度にみることができる。

数百から数千のタンパク質名が列挙され、それぞれについてサンプル(4つまたは8つ)間で量を比較した数値が書かれた表の形で得られる。「発現量比較データのサンプル」はこちらから。このデータをもとに、自身の興味のあるタンパク質に注目して比較したり、さらにフリーのデータベースであるDAVIDを使ってデータマイニングすることで膨大なデータの解釈を行うことが可能だ。

解析にはiTRAQ試薬、2段階に分画する装置、そしてMS分析をする分画装置が必要となるので、研究室で新しくこれらをそろえるの難しい。しかし、現在、日本では各社からiTRAQ解析受託サービスが提供されている。使用している機器やデータ解析のサービス、そして費用がそれぞれ異なっているので、じっくり比較検討し、まずは問い合わせてみることをおすすめする。リバネスでもサービス提供を行っているので、ぜひご一読を!
→ プロテオーム解析の受託(iTRAQ, MudPITに対応)
→バイオガレージでは8種類のタンパク質同定定量解析に対応していない理由