iTRAQの原理を詳しく知る

タンパク質発現の網羅的解析技術iTRAQ

2004年にAppliedBiosystems(当時)のPhilip L. Rossらが発表したこの技術は、「マイクロアレイのタンパク質版」のようなものだ。測定原理は大きく異なるが、複数サンプル間でタンパク質の存在量を網羅的に比較することができる。測定の要となるのが、同位元素を巧妙に組み合わせたIsobaricTagである(図1)。iTRAQ試薬では、レポーターグループの分子構造を変えないまま、一部の原子を安定同位体に置き換えることで、お互いに区別可能なタグを作っている。バランスグループも安定同位体を用いて、タグ全体の分子量が変わらないように調整している。このように全体としては同じ構造、同じ質量ながら、4種類または8種類の区別可能なタグがiTRAQ試薬に含まれる。

iTRAQタグ分子

図1 iTRAQで用いられるタグの分子構造。
どの原子を安定同位体で置き換えるかを変えることにより、分子量が114~117の4種類(4-plex)、または113~121(120を除く)の8種類のレポーターグループを作る。
バランスグループの原子も同様に安定同位体を組み合わせ、タグ全体の分子量を一定に保っている。8-plexのバランスグループの構造は公表されていない。

 

解析の際は、比較したいサンプルのタンパク質を還元・アルキル化後にトリプシン処理し、異なるタグで標識後に2段階のMS解析を行う。1段階目のMSでペプチドごとの質量を得る際は、それぞれのペプチドにiTRAQタグが結合した状態であるが、それぞれのタグは同じ質量を持っているために、異なるサンプル由来のものでも区別されない。ペプチド結合を開裂させ、2段階目のMS解析を行うと、プロダクトイオンと共に、レポーターグループの質量情報を得ることができる。このレポーターグループを示すスペクトル面積を比較することにより、元々のサンプルに含まれていた当該ペプチドの比較定量を行うことができるのだ(図2)。

iTRAQは、このように同時に最大4つまたは8つのサンプルについて、タンパク質の網羅的比較定量が可能な技術だ。上記したRossらの論文によると、酵母の遺伝子欠損株2系統と野生型との間で発現比較をしたところ、タンパク質とmRNAとで存在量に有意な相関が見られなかったという。この結果は、変異体の性状を解析するために、転写レベルの網羅的解析に加え、タンパク質の網羅的解析が今後重要になることを示唆しているだろう。

iTRAQ原理

図2 iTRAQの原理。
比較したいサンプルから精製したタンパク質を還元・アルキル化後にトリプシン処理し、できたペプチドにiTRAQタグを結合させる。
それらを混合し、1段階目のMSでペプチドごとに分離、2段階目のMS/MSでペプチド結合を開裂させ、ペプチドを同定する。
この際、質量情報にはiTRAQタグのレポーターグループが含まれている。それぞれのレポーター部分のスペクトル面積を比較することにより、元のサンプルに含まれていた当該ペプチド量の比較定量を行うことができる。図中のタグ部分にある数字は、レポーターグループの質量を示す。

 

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