08/04: 分子のありのままの動き〜1分子イメージングへ
分子のありのままの動き
〜1分子イメージングへ
オリンパス株式会社(以下、オリンパス)が世界に先駆けて製品化した全反射照明顕微鏡システム(製品名TIRFM)は低バックグランド、高シグナル蛍光感度を実現し、超高感度の1分子イメージングを提供する。この方法の開発者であり、さらに技術的に一歩深めた薄層斜光照明法の開発者である理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの徳永万喜洋氏にお話を伺った。
電子顕微鏡から1分子研究へ
動的に振る舞う生体分子をそのまま観察することは、ライフサイエンス研究者の大きな夢。徳永氏もそんな夢を実現しようとする研究者だ。大学院時代から電子顕微鏡で研究を続けながら、生きた1分子の動きを見る重要性は痛感していた。そんな折、ERATO柳田生体運動子プロジェクト(1992〜1997年)を知る。心を決め、助手を辞めてメンバーに加わった。分子1個の動作を直接高分解能で測定するという目標に向けた研究が日夜続いた。当時テーマの1つに、1分子力計測でアクチン上を5.5nmのステップで動くミオシン1分子の動態観察があった。ナノレベルの繊細な計測が必要とされる。どうしても焦点の安定性や振動に対する強さを持った機器が必要だった。この要求を満たした機器こそが、当時ようやく発表されたIX-70だったという。「名機ですよ」と語る徳永氏は、第1号機のユーザーとして使い始めることになる。「使い始めてすぐにカスタマイズしてはいけないところまで変更してしまい、すぐに壊さないで下さいよと言われたこともありましたね」と笑いながら当時を振り返る。
無理だと思われた全反射
顕微鏡との出会いもさることながら、プロジェクトメンバーから無理、できっこないと言われていた光学系開発にあえて挑戦し、実現したことがその後の1分子イメージングを拓くことになる。それが全反射照明法だった。10数枚にも重ねた対物レンズの縁にレーザーを通した時に発生する光を利用して分子を観察するこの方法は、落射照明法と比べて約3.2倍のシグナル蛍光感度を示した。理論的にはマクスウェル方程式から4倍まで強くなることが導け、理論値の検証を最初に実験で証明したことになったと後から知った。研究成果はオリンパスによって製品化された。世界で初のTIRFMの登場だ。この時の挑戦は世界に技術を広げただけでなく、薄層斜光照明法につながる経験も徳永氏に与えることとなった。
光は弱くシグナルは強く
共焦点顕微鏡はレーザー光を1点に集光して分子の観察を行うため、光によるサンプルの損傷が大きく、また蛍光色素の退色が早い。そのため分子数が少ないタンパク質の場合、z軸方向の走査中に退色が進み三次元像の取得を困難にする。1分子の動態を調べる上では大きな障壁だ。全反射照明法の場合、照射する光は弱いので退色は遅い。また、バックグランドが低いので高感度の像を得ることもできる。しかし、観測範囲がエバネッセント光の届く50〜200m程度の距離に限定される(図1)。そのため細胞内部の分子を詳細に観察することが難しい。一歩進んだ技術の確立が必要とされた。さらなる進展は、国立遺伝学研究所での研究(1997年〜2007年)を待つこととなる。
08/02: 沖縄ならではの バイオインフォマティクス人材育成 講座・リポート
沖縄ならではの
バイオインフォマティクス人材育成
講座・リポート<前篇>
財団法人沖縄科学技術振興センター主催の「バイオインフォマティクス人材育成講座(平成22 年度沖縄県産業振興基金人材育成事業「バイオインフォマティクス人材育成推進事業」)」が、琉球大学、沖縄工業高等専門学校の後援をうけて、7月10日(土)開講した。8台3 種類の次世代シーケンサーが集積し、膨大な生物学的情報の蓄積が進む沖縄において、それらを科学技術、産業振興に利活用する人材が求められている。県内外8つの機関から集まった10名の錚々たる講師陣により展開される本講座の前半を振り返ってみたい。
いざ、開講!
開講前に開催された2つのイベント(2月20日・プレ講座受講者:78名、5月15日・フォーラム参加者:123名)、バイオインフォマティクスの認知度が決して高くはない沖縄において、この盛況ぶりは驚きであった。開講前から高い期待の中にあった本講座は、7月10日、国立遺伝学研究所教授・大久保公策氏の「バイオインフォマティクス総論」を皮切りに開講した。情報の共有化がもたらす科学の進歩や社会貢献と今後のバイオインフォマティクスについて、独特の口調で展開される講義は受講生をしっかりと惹きつけていた。さらにバイオインフォマティクス関連ビジネスを展開する株式会社セルイノベーターの荒木啓充研究開発部長と土井淳主任研究員による具体的なサービスの事例紹介を交えた講義は、業界の現状とともに仕事のイメージを受講生に伝えた。これら2つの総論から、バイオインフォマティクス分野の今後の可能性と仕事のイメージを学んだ受講生は、一朝一夕に習得できる分野ではない難しさを感じつつも、本講座を受講するモティベーションをさらに高めていた。
生命科学一般・基礎と応用
広範な生命科学の中で特に重要と思われる基礎の講義を、琉球大学准教授・要匡氏が担当した。この先、より専門的な講義・実習が組まれている講座にあって、細胞やDNA、RNA、タンパク質、セントラルドグマ、遺伝子、ゲノム、遺伝子疾患といった内容を理解せずに進むことはできない。わずか2コマ(90分×2)に濃縮された講義に、講師も受講生も集中していた。
沖縄科学技術研究基盤整備機構(以下、OIST)のユニット代表研究者、佐藤矩行博士、丸山一郎博士が担当した生命科学応用では、サンゴやホヤの分子系統学研究、線虫を用いた記憶の研究など最先端の研究とバイオインフォマティクスの関連がわかり易く伝えられた。受講生の理解に合わせて講義に織り交ぜられたキーワード解説は、研究のイメージとともに受講生の記憶の中に強く残ったに違いない。
分子生物実験技術実習・生物が
もつ情報がデジタル化されるまで
生物から情報を引き出す、引き出された情報を正しく理解する、そのためには分子生物実験技術の理解・習得は不可欠である。座学で生命科学の関連分野を学んだ受講生は、培養した動物細胞からのRNA抽出、特定遺伝子の増幅、増幅した特定遺伝子の塩基配列データ取得まで、一連の実験技術を理解・習得するべく、沖縄工業高等専門学校教授・池松真也氏の分子生物実験技術実習に臨んだ。池松氏の教え子の高専生たちのサポートも加
わり、きめ細やかな技術指導が盛り込まれた実習は、初めて実験機器に触れる初心者にもわかり易いものとなった。実習でターゲットとしたミッドカイン遺伝子の配列データは、続く情報科学一般実習へと引き継がれる。
オプション見学ツアー・県民に公
開された次世代シーケンサー
沖縄県うるま市にある沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター、ここに次世代シーケンサー3機種8台が集結する。今回の見学ツアーでは、OISTの全面的な協力のもと、Solexa(イルミナ)と454(ロシュ・ダイアグノスティックス)という2機種5台の実機見学と、これら次世代シーケンサーを活用した研究紹介という大変贅沢な見学ツアーが実施された。日々シーケンサーを活用するOISTの研究者から、サンプル調製、シーケンシング、PCクラスターについてラボで直接解説を受けた受講生は、予定した時間を大幅に過ぎてなお質問をやめることはなかった。次世代シーケンサーを活用した沖縄ならではのバイオインフォマティクス分野の可能性や仕事のイメージがより具体的になったに違いない。
バイオインフォマティクス人材育成講座は現在折り返し地点。続く、情報科学一般、バイオインフォマティクス基礎・応用は、PCを使った実習が中心となる。次世代シーケンサーなど最先端機器によって取得されるデータがいかに膨大かを知った受講生は、生物学的情報の高度な処理技術が不可欠であることを強く認識し講座後半に臨む。
08/01: セラミドをめぐる産学の新たな展開、セラミド研究会発足
セラミドをめぐる産学の
新たな展開、セラミド研究会発足
コラーゲンとは異なる機能性素材として近年セラミドが新たに注目を浴びつつある。一方でその作用機構、吸収代謝機構など不明な点も多い。この中、セラミドが持つ新たな可能性を引き出そうと、2008 年に大学・企業の研究者が集まり「セラミド研究会」が発足した。発起人であり、理事長でもある北海道大学の五十嵐靖之氏に想いを伺った。
奥深いセラミドの世界
セラミドはスフィンゴシンのアミノ基にアシル基がついた構造をしており、スフィンゴ脂質の基本骨格をなす。生体内では様々な酵素の働きにより、1位のCにホスホコリンや単糖、およびシアル酸を含むオリゴ糖などが結合し、スフィンゴミエリンや種々の糖脂質など細胞膜を構成する膜脂質が合成される。そのため、膜脂質の一成分としてよく研究されてきた。近年セラミドの生理機能の1つとして皮膚の保湿機能、さらにはその異常としての乾皮症、アトピー性皮膚炎との関連が示唆されている。細胞のアポトーシスが誘導される際のシグナル分子としての役割も示唆され、セラミドの分解産物であるスフィンゴシンやスフィンゴシン1−リン酸とともにセラミドの膜成分として以外の機能も重要視され始めている。
高まる期待と求められる研究の進展
皮膚機能向上に繋がる機能性食品素材として注目されるセラミドだが、それはコラーゲンが真皮に、セラミドは角質層で働くと考えられている点が大きい。生産が難しいため、市場規模は2007年度で8tと規模は小さいが、2003年度から約160%増と需要は高い。五十嵐氏は今の問題点を鋭く指摘する。「現段階では効果だけが謳われ、その作用メカニズムや吸収代謝のメカニズムはほとんど解明されていません。一般に機能性食品は、予防医学の発展から見ても将来的には大きな可能性のある分野になりえます。そのためには信頼性を高める上で、科学的根拠を明らかにすることはますます重要になってきます」。
「最近、セラミド代謝が中性脂肪代謝の制御に関わることが分かってきており、肥満の治療薬としても利用が可能ではないかと考えています」と、創薬研究での新たな可能性も視野に入れる。
研究会発足
「長年研究を続けたスフィンゴ脂質の栄養学的問題や吸収代謝機構が明らかになっていないことを強く問題視していました」と、米国から日本に研究の場を戻した1989年当時のことを振り返る。それ以来、論文投稿や講演会などを通じてスフィンゴ脂質の栄養学の重要性について機会を捉えては訴えてきた。同じころ食品関連企業が機能性素材としてセラミドに注目し始めていた。こうした五十嵐氏など研究者の活動と産業界のニーズは、大学での基礎研究と産業界での応用研究の両方からセラミド研究を盛り上げる機運を高めたといえよう。そして2008年、五十嵐氏をはじめとする30人の研究者と15の食品関連企業を中心に「セラミド研究会」が発足した。
「まだ発足して間もないですが、日本国内外のアカデミアと企業の研究者が120人近く集まり、最先端研究から製品開発、マーケティングまで多岐にわたる話題が飛び交い非常に刺激的です。業種や研究分野のテリトリーがあっては重要な問題を見逃してしまいます。大学と企業の研究者が集まって議論を交わしているのは、この研究会のユニークさであり、面白さです」と、これまで準備会を含めて3回開催された研究会について語る。すでに研究会は企業の応用開発と、それに必要な基礎研究をマッチングさせる場に少しずつではあるが成長しつつあるという。
さらなる進展のために
五十嵐氏をはじめとする日本のセラミド・スフィンゴ脂質研究は、世界的に研究の中心の1つになりつつある。例えば北大次世代ポストゲノム研究センター創薬基盤イノベーションハブでは、生体内での活性のほか、抗肥満、抗アレルギーをターゲットにした医薬品が、札幌Bio-S知的クラスター事業ではセラミド含有機能性食品の開発が進められる。長年培われてきた基礎研究における国際的優位性がその原動力となっているといえるかもしれない。
「これからは研究会を世界の研究者との接点、若手の育成、アカデミアと民間の研究者が色々な議論をしていく場として大事にしたいです。そして日本をセラミドの創薬、機能性食品開発の中心としても盛り上げていきたいですね」。スフィンゴ脂質の生理作用、吸収代謝という基礎研究を常に自身の中心に据えながら、応用開発研究も含めてセラミド研究全体の発展も視野に入れる五十嵐氏。話の最後に「遺伝子、ゲノム研究の進展で生命科学は大発展したことは間違いないですが、それでもなおわからないことの方が多く、現在の生物学は物理学でいうニュートン力学の段階だと考えています。本当に初期の段階。これからアインシュタインがでてくるでしょう」と力強く語ってくれた。セラミド研究会の盛り上がりが、セラミド研究のこれからを加速するに違いない。
07/31: 1台2役で省スペース 多用途を実現する 日立CF16RXⅡ
1台2役で省スペース 多用途を実現する 日立CF16RXⅡ
微生物や細胞、DNA・RNA、タンパク質を扱っている研究室の場合、卓上の製品も合わせて数台の遠心分離機が設置されているのは日常的な光景の1つだ。この数年で国内のメーカーからアングルロータ、スイングロータの両方を使える製品が発売されるようになり、少ない台数で様々な目的に対応できる環境が整いつつある。
多用途へと進化する遠心機
遠心機の使用目的というと細胞の回収、キットやマニュアル操作によるDNAやRNAの抽出・ 精製、アッセイの際の反応液の調製、限外ろ過によるタンパク質の濃縮など多岐にわたる(表1)。硫安分画や密度勾配遠心のように高回転の遠心分離操作が必要な場合は別にして、多くの実験操作は20,000×gの遠心力が出せれば事足りることが多い。そのため、ロータの交換をするだけで他の用途にも使える遠心機があれば、実験室のスペースの確保にも役立つ。
2003年ごろから、96ウェルプレートや集菌用のボトルにも対応したロータを装着できる遠心機が国内の各メーカーで取り扱われ始めた。アングルロータとスイングロータの両方を扱うことのできる点は、用途が多岐にわたるユーザーにとってはうれしいところだ。
日立CF16RXⅡのスペック
2006 年に日立工機株式会社から販売された日立CF16RXⅡは、PCRチューブ、マイクロチューブはもちろんのこと、集菌ボトル、96ウェルプレート、96ディープウェルプレートまで対応している。さらに一度に扱うことのできるチューブやプレートの数が多いことも特徴の一つだ(図1、表2)。
研究所導入記
リバネスは2009年に戦略的基盤技術高度化支援事業に採択され、海洋微生物のスクリーニングを実施した。この中で実際に日立CF16RXⅡを導入して研究開発を行ったので、その時の話を振り返ってみたい。
50㎥ほどの研究所で、単離してきた大量のサンプルからのDNA抽出や培養した微生物の回収を、省スペースで効率的に行うことが申請時の課題であった。日立CF16RXⅡがアングルロータとスイングロータの両方に対応していたことと、研究メンバーの多くが日立工機製の遠心機を学生時代に使っていたこともあり、この機器を導入することになった。
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株式会社リバネス先端科学技術研究所で微生物のスクリーニングと微生物中の機能成分の分析を行った時の実験フローを示す。 アングル、スイングの両ロータに対応しているため、1 カ所で色々な実験を行うことができた。 |
実際には、4ヶ月弱という期間のうちに約8,000株の微生物をとり、培養、GC-MSによる抽出物の成分分析を中心に実施した。よく行った実験のフローを図にしたので、そこを見てほしい(図2)。培養スケールの大小はあるものの、前日から培養し、チューブを使って微生物を回収してDNA抽出やGC-MS解析のサンプル調製を行っていた。15mlのチューブは一度に24サンプル、50mlのチューブは一度に8サンプルを処理することができるため、午前中にスイングロータを使ってサンプルを集めることができた。午後はアングルロータに変えてDNA抽出やGC-MS用のサンプル調製を行い、翌日以降にサンプルの解析を行うフローが出来上がった。おかげで、午後には再び培養を始められるため、微生物が確保できてデータ収集が集中した年度末の研究の効率化に一役買ってくれた。
新しい遠心機の導入を検討中で、場所をかけずに様々な用途に使えるものを探している方にはお勧めの一台といえるだろう。
07/30: 沖縄ならではのバイオインフォマティクス人材育成講座
沖縄ならではのバイオインフォマティクス人材育成講座
財団法人沖縄科学技術振興センター(OSTC)では、2010 年夏、「バイオインフォマティクス人材育成講座」(平成22年度沖縄県産業振興基金人材育成事業「バイオインフォマティクス人材育成推進事業」)を開講する。沖縄県において着々と進む研究基盤整備にともない蓄積される膨大な生物資源情報を利活用し、科学技術と社会、特に産業との架け橋となるような今後の沖縄において必要となる人材の育成を図るのが目的だ。
しかしなぜ、沖縄でバイオインフォマティクスなのだろうか、OSTCの専務理事兼所長の島崎潤一氏に聞いた。
最先端研究に対応できる人材育成は急務
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島崎 潤一氏 (しまざき じゅんいち) |
財団法人沖縄科学技術振興センター 専務理事兼所長 |
「あまり知られていないことかと思いますが、沖縄県は次世代DNAシーケンサーの集積地なのです。2年ほど前、沖縄県は自治体としては全国で初めて次世代DNAシーケンサーを導入しました。そして導入された3台の次世代DNAシーケンサーの管理運用は当センターが任されています。」事実、沖縄県は全国でも有数の次世代DNAシーケンサーの集積地であり、県が導入した3台以外にも沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)が所有する5台の次世代DNAシーケンサーがあり、沖縄県うるま市に集中している。島崎専務は続ける。「いざ運用といっても県内では最先端の装置を扱え、次々と読み解かれるDNA配列情報を有効に県益に適う産業振興に利活用する人材が少なく、当センターでは、県内で自立的に運用、利活用できる人材の育成が急務と考え、バイオインフォマティクス人材育成推進事業に着手しました。」
研究基盤整備と同時並行で人材育成
平成14年に策定された沖縄振興計画では、日本で唯一の亜熱帯地域である沖縄の地域特有で豊富な農林水産物資源、例えば、伝統的食素材や海洋生物資源等を活用する健康バイオ産業を重点産業として位置づけている。翌平成15年には沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センターを開所、本格的に健康バイオ産業、新産業創出に向けた研究開発が動き出した。沖縄県に次世代DNAシーケンサーが導入された経緯にはこのような背景もあるのだろう。 沖縄県は他地域に比較して教育や研究の水準が決して高いとは言えない。産業においても成熟した状況とは言い難い。現在着実に進行する研究基盤の整備を追い風として受け、今こそ科学技術及び産業振興を推進していく時期にあると言える。一朝一夕にはならない人材育成は、研究基盤等の整備が整ってからでは遅すぎる。人材育成は研究基盤整備の先を見据えて同時並行で展開しなければならない。
沖縄県の振興は地元の人材が担う
沖縄でバイオインフォマティクスを専門とする研究者、技術者は多くはいない。島崎専務は沖縄において今後必要になると判断したバイオインフォマティクス人材を継続的に輩出するための仕組みとして、沖縄独自のバイオインフォマティクス人材育成プログラムを講座として琉球大学や沖縄工業高等専門学校に導入することを目標の一つに定めて事業を立ち上げた。沖縄独自としたところには、沖縄県の振興を願う気持ちが込められていると感じた。沖縄の地域特有な農林水産物資源の生物学的情報の利活用と産業振興を、全国でも最も地元に愛着をもつ沖縄県民にこそ担ってもらいたい、島崎専務もまた沖縄が大好きなのだ。
この夏の開講を目前に、人材育成講座のカリキュラム策定が着々と進む。計画から実行までが早かったこともありスケジュールはタイトである。しかし、バイオインフォマティクス人材育成講座の趣旨に共感した県内外の多くの先生方が同人材育成講座成功のため惜しみない協力でこれを支えている。国立遺伝学研究所、理化学研究所、産業技術総合研究所、沖縄科学技術研究基盤整備機構、東京大学、琉球大学、沖縄工業高等専門学校、バイオインフォマティクス関連企業、錚々たる講師陣が沖縄のためのバイオインフォマティクス人材育成講座を展開する。島崎専務をはじめ関係者の人材育成にかける思いは同講座の成功に託され、また同講座でバイオインフォマティクスの知識・技術を習得した受講生に引き継がれ、沖縄ならではの科学技術及び産業振興が自立的に発展し続けるものと期待している。
管理団体:財団法人 沖縄科学技術振興センター |
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理事長: |
諸喜田茂充(琉球大学名誉教授) |
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専務理事兼所長: |
島崎潤一 |
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所在地: |
〒900-0029 沖縄県那覇市旭町112-18 沖縄県旭町会館2階 |
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設立: |
平成8年10月 財団法人亜熱帯総合研究所 平成20年8月 財団法人沖縄科学技術振興センター(名称変更) |
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事業内容: |
亜熱帯地域島嶼地域等の有する諸問題等に関し、学際的、総合的に研究すること等により、沖縄県の振興開発のみならず、日本及びアジア太平洋地域の学術・研究の振興に寄与することを目的として、財団法人亜熱帯総合研究所が設立され、平成20年8月、新たに沖縄県の科学技術の振興を支援する中核機関としての役割も担うため、財団法人沖縄 科学技術振興センター(現組織)に名称を変更した。平成22年度の主な事業として「マリンバイオ産業創出事業」、「先端バイオ研究基盤高度化事業」などに取り組んでいる。 |
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URL: |
http://subtropics.sakura.ne.jp/ |
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INFOMATION: |
バイオインフォマティクス人材育成推進事業では、企業コンソーシアムを構築し、企業が求めるバイオインフォマティクス人材を企業と一緒に育成するシステムをカリキュラムに導入することを計画しています。沖縄県内外を問わず参画企業を募集いたします。 |
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07/29: 3D-Gene®が未開の地を切り拓く
3D-Gene®が未開の地を切り拓く
BioGARAGE03で東レ株式会社(東レ)製3D-Gene®を用いて炎症反応機構の解明を目指した研究について、北里大学の井上助教に話を聞いた。独自の技術で飛躍的に高まった3D-Gene®の検出感度に初めて触れ、驚きを隠せない姿が印象的であった。今回は解析データを元に、今後の研究に思いを巡らせて頂いた。
炎症反応機構の解明を目指して
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井上 浄氏氏 (いのうえ じょう) |
2003年3月:東京薬科大学 薬学研究科薬剤学講座 博士前期課程 修了 2006年3月:東京薬科大学 薬学研究科 薬剤学講座 博士後期課程 修了 2006年4月:北里大学 理学部 生物科学科 生体防御学講座 助手(現助教) |
井上助教らは炎症反応に重要な役割を果たすタンパク質として、Gタンパク質の1種であるRap1に注目している。Rap1を不活性化するGTPase活性化因子(GAP)の一つであるSPA-1をノックアウトしたマウス(SPA-1KOマウス)では、肝臓や皮膚に膿の塊(膿瘍)が形成される。「これは細菌などの感染に対して過剰な炎症反応が起きていると考えられます」。SPA-1KOマウスは炎症反応にブレーキが効かず、炎症が起こる際に産生されるサイトカインやケモカイン等が過剰に産生され続けている可能性を予測した。そこで、炎症反応に深く関るマクロファージに注目し、野生型とSPA-1KOマウスのマクロファージに同じ刺激を与え、両者間の遺伝子発現パターンの違いを3D-GeneⓇを使って検証した。
豊富な経験が研究者を強力にバックアップする
3D-Gene®の強みは感度の高さだけではない。もう一つの強みは、精度の高い解析データの解釈を助ける東レの研究員の存在だ。マイクロアレイなどの網羅的解析データは、解釈次第で宝の山にもゴミの山にもなりうる。その解釈を助けるのは経験だけであり、東レのマイクロアレイデータ解析経験を積んだ研究員が研究者を強力にバックアップする。
正確な解釈が研究を前に押し進める
クラスター解析及びパスウェイ解析の結果から、野生型に比べSPA-1KOマウスのマクロファージでは炎症系サイトカイン遺伝子の発現が高い傾向が得られた。更にSPA-1KOマウスの樹状細胞(DC)とマクロファージも比 較した。井上助教らはDCではSPA-1以外にもRap1のGAPとして働く分子が存在すること、マクロファージではSPA-1が主なGAPとして働いていることを発見している。つまり、理論上DCではSPA-1が機能しなくても活性化されたRap1は不活化され、マクロファージではSPA-1が機能しなければRap1が不活化されることはない。
結果はどうだったか。SPA-1KOマウスのDCでは炎症系サイトカインの多くは変化が無く、マクロファージ特異的に炎症系サイトカインの発現が強まっているという傾向が得られたのだ。「3D-Gene®の感度とデータ解釈に関する助言からSPA-1、更にRap1の炎症反応への影響に強い確信を持てた」。正確な解釈が、研究を前に押し進める。炎症反応機構の解明に向けた井上助教の研究が更に前進した。

東レ株式会社 |
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所在地 |
〒103-8666 東京都中央区日本橋室町2-1-1 日本橋三井タワー |
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設立 |
1926年1月 |
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資本金 |
96,937,230,771円 |
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事業内容 |
下記製品の製造および販売、繊維事業、プラスチック・ケミカル事業、情報通信材料・機器事業、炭素繊維複合材料事業、炭素繊維・同複合材料および同成型品等、環境・エンジニアリング事業、ライフサイエンス その他 |
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URL |
http://www.toray.co.jp/index.html |
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お問い合わせ |
Tel 03-3245-5111 / Fax 03-3245-5054 もしくはこちらよりお問い合わせください。 |
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07/28: 細胞内の分子ダイナミズムに迫る
細胞内の分子ダイナミズムに迫る
分子どうしの相互作用をいかにとらえるかは、ライフサイエンス研究の大きな命題の1つだ。1つの波長で2種類の蛍光を検出できるFlucDEUX™は、異なる分子が発する蛍光の相関関係から、分子間の相互作用を浮き彫りにする。蛍光相関分光法、蛍光相互相関分光法を使って分子間相互作用を調べ、FlucDEUX™の開発にも一役買った北海道大学の金城政孝教授お話を伺った。
1分子の動きを測定する手法
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金城 政孝氏氏 (きんじょう まさたか) |
1981年宇都宮大学大学院農学研究科修了、1985 年自治医科大学大学院医学研究科修了、医学博士、1985 年北海道大学応用電気研究所助手、1997年北海道大学電子科学研究所助教授を経て、2007年より北海道大学大学院生命科学研究院教授。 |
溶液中の分子はブラウン運動によってランダムな動きをしている。レーザーによる共焦点光学系を利用してフェムトリットル程度の極微小な共焦点領域を作り、そこを通過する蛍光分子の蛍光強度を観察する、ブラウン運動に起因する蛍光強度のゆらぎを観察することができる。この方法が蛍光相関分光法(Fluorescence correlation spectroscopy ; FCS)だ(原理は図1)。蛍光強度のゆらぎを相関関数によって解析することで、測定領域を通過する核酸時間からは分子の動きの速さを表す“拡散定数”が、ゆらぎの幅からは“分子数”がわかる。これらに加えて蛍光強度も直接得ることができるので、これを分子数で割ることで1分子当たりの蛍光強度も間接的に求められる。これがFCSの簡単な概要だ。一方、これを異なる2 種類の蛍光分子に対して同時に行い、蛍光強度の変化に相関がみられるかどうかを観察するのが、蛍光相互相関分光法(Fluorescence cross correlation spectroscopy ; FCCS)だ。分子どうしが相互作用している場合は、相関関数が大きくなり、相互作用が無い場合には、相関関数は小さくなる(図2)。FlucDEUX™は後者の測定装置だ。
図1 共焦点領域を通過する蛍光分子とそれによって起こる蛍光強度のゆらぎ

蛍光分子はブラウン運動により観察領域に入った後に、外に出る
(a)小さい分子の場合、観察領域の蛍光強度は速やかに上がり、速やかに減少する。
(b)大きな分子の場合、観察領域の蛍光強度はゆっくり増加して、ゆっくり減少する。
(c)分子の数が少ない場合、個々の分子が観察領域に侵入すると蛍光強度は急激に増加、分子が出ると急速に低下するため、光の点滅が激しくなる。
(d)領域に多数の蛍光分子が多い場合、蛍光強度のゆらぎは平均化され、ゆらぎの幅は小さくなる。
図2 蛍光相互相関分光測定の概念図

(a)2種類の蛍光分子(図では緑色と紫色)の間で相互作用が無く、独立に観察領域に出入りしていると、シグナルの同時性は検出されず、低い相互相関関数(緑色の線)が示される。
(b)2種類の蛍光分子の間に相互作用があると、シグナルは同時に検出され、相互相関関数も大きくなる。
蛍光相関分光法との出会い
「相互作用を解析することになったきっかけは、今でも解決されていませんが、アミノ酸とアンチコドンの対応関係がなぜ生まれたのかという疑問でした」と、金城氏は研究を始めた学生のころを振り返る。蛍光相関分光法で分子間相互作用が解析できると感じたのは、それから数年後になる。「ちょうどスウェーデン(Karolinska研究所)に留学していた時のことですが、DNAを使って蛍光相関分光測定を行っていた時です。測定値が予想分子量よりも1,000倍ほど大きくて原因が分からなかったんですよ。M13ファージDNAを使って研究をしていたのですが、同僚からタンパク質の場合は形が楕円だと楕円体モデルに当てはめて拡散時間が計算できることを教えてもらいました。実際M13ファージDNAでやってみると、実測値が説明できることが分かりました」。蛍光相関分光法への確信を深めた瞬間だった。
分子間相互作用解析へ
「スウェーデンから日本に戻ってきた時は、まだ日本に蛍光相関分光測定の装置が無かったので、自作しました。特に、ピンホールをあけるのが大変でした。何せ、ピンホールなんてあけたことが無かったですから」と笑いながら語る金城氏だが、測定系の構築は試行錯誤が続いた。細胞内の分子間相互作用をいかにとらえるかという問題取り組む中でも、測定系をいかに組み立てるかに腐心した。特に手法としての有効性を感じていたFCCSは、原理は単純だが、装置の特性上、構築が難しかった。そんな時、理化学研究所の宮脇敦史氏からストークシフトの大きい蛍光タンパク質Keimaの話が舞い込む。ストークシフトが大きいと、励起波長の近い他の蛍光タンパク質を一緒に使うことで、1波長で2 種の蛍光が得られるのだ。装置上の問題をプローブ側の改善によって解決したことで、2種の分子間に働く相互作用を検出する機械が誕生することとなる。それがFlucDEUX™だ。
終始穏やかな口調で話しながら、「リバネス研究費の採択者の方と近い将来共同研究するのもたいへん面白いですね」とも語ってくれた。金城氏が起こす人-人相互作用から新しい研究のブレークスルーが生まれる予感がする。
FlucDEUX™ 命名秘話
2種類の分子に異なる色の蛍光標識を施し、それぞれの揺らぎを同時に観測すれば、分子間の相互作用に関する情報が得られる。FCCS (蛍光相互相関分光法)の原理である。我々はストークスシフト(励起波長と蛍光波長の差)に着目して蛍光蛋白質の開発を行い、一波長で励起し二波長で測光するべき蛍光蛋白質ペアを完成させた。このペアを用いれば、一つのレーザーでFCCSが可能になる。この便利なFCCSシステムに名をつけるなら“一石二鳥”はどうかと考えていた。最終の命名は“FlucDEUX”となった。“Fluc”は揺らぎを表し、“DEUX”はフランス語で2を指す。ヨーロッパに向かう飛行機の中DやUなどを並べた造語をたくさん頭に放り込んで一眠り、シャルル・ドゴール空港に着いてしばらくしたら“DEUX”が醸成してきた。
(共同開発者理化学研究所宮脇敦史博士より)
株式会社医学生物学研究所 |
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所在地: |
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-10 住友商事丸の内ビル5 階 |
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設立: |
1969年8月 |
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事業内容: |
医薬品・バイオ産業全体(研究用試薬、臨床検査薬、病理・細胞診断検査を主に取り扱う |
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URL: |
http://www.mbl.co.jp/ |
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お問い合わせ |
TEL 052-971-2089 / FAX 052-971-2065 E-mail |
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07/27: 第2回リバネス研究費Pickup キャリパーライフサイエンス賞
第2回リバネス研究費Pickup キャリパーライフサイエンス賞

キャリパーライフサイエンス社のLabChip GXはマイクロ流動を利用することでDNA、RNA、タンパク質の電気泳動を短時間、多サンプルで実現する。扱えるサンプルの最大数は384個、これを数時間で泳動することができる。さらに、サンプル分離能が高いこと、泳動パターンのクロマトチャートをサンプル間で重ね合わせることができる、といった特徴を活かすことでサンプル間での分子量変化が解析しやすくなっている。反応の条件検討やカラムクロマトグラフィーといったサンプル数が多くなる実験だけでなく、サンプル間で分子量変化を比較したい場合にその 力を発揮する。DNAの電気泳動に関しては、アガロースゲル電気泳動と比較した場合に分解能が非常に高いことをBioGARAGE vol.01で紹介した。実際の研究の場面で見ると、創薬研究の現場で抗体医薬の品質管理として、Non-Glycosylated Heavy Chainの比率を調べるためにこの機器が用いられている。
今回のキャリパーライフサイエンス賞は、兵庫県立大学でX線結晶構造解析を行っている寺脇慎一特任助教に決定した。結晶化に最適なタンパク質ドメインの効率的な探索がLabChip GXを利用する大きな目的だ。プロテアーゼを利用したタンパク質の限定分解によってドメインの決定を行うため、詳細な条件の検討にハイスループットのこの機器が力を発揮することが期待される。個人的な見解であるが、私自身修士課程でX線結晶構造解析を行っていたこともあるので、寺脇氏の研究の展開がどうなるか非常に楽しみだ

LabChip GX
装置は縦横が50㎝四方に収まり、奥行きが70㎝に満たないため、実験台にそのまま置くことが可能だ。データは専用ファイルの他、tifなどの画像フォーマットでも出力が可能なので、データ作成も容易にできる。

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寺脇 慎一 (てらわき しんいち) |
2006 年3月奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科修了(理学)、奈良先端科学技術大学院大学COE 研究員、科学研究費特別研究員を経て、2008 年1月より兵庫県立大学生命理学研究科特任助教。 |
私は、これまで一貫して、X線結晶解析法を利用したタンパク質の立体構造解析によるヒトなどの高等動物の細胞増殖や運動性を制御する分子機構の解明に取り組んできました。今回、採択していただきました研究課題では、キャリパーライフサイエンス社のLabChip GXを利用することで、結晶化にもちいるタンパク質のドメイン領域を同定して、X線結晶解析を行い、微小管に依存した物質輸送の分子機構を原子レベルで解明したいと思っています。X線結晶解析を成功させるためには、第一に、研究対象とするタンパク質の精製と結晶化をおこなう必要があります。しかし、生物学的に重要かつ創薬の標的となるようなタンパク質は、その調製自体が困難で、結晶化をおこなうことができない場合が多々あります。今回、構造解析の対象とするBi caudal- D (BICD)は、分子モーターであるダイ ニンと相互作用することによって、小胞膜などの微小管依存的な輸送を制御する因子ですが、精製過程で不溶化する問題を抱えていました。また、分子内にも既知の機能ドメインが存在していないことから、結晶化に適したドメイン領域を予測することも困難でした。そこで、本研究では、多検体を短時間に分析する能力に優れたLabChip GXを利用することで、①タンパク質分解酵素を利用した限定分解、②DNAライブラリーの作成、③組換えタンパク質の発現解析をおこない、可溶性の機能ドメイン領域を同定したいと考えています。これらの分析をおこなうことで、これまでは結晶化を断念していた試料調製が難しい難結晶性タンパク質に対する新しいアプローチを提案できると考えています。したがって、本研究の成果は、構造生物学という研究領域にLabChip GXの活用法を示した良い例となると確信しています。最後に、このような本研究の機会を与えたくださった株式会社リバネスとキャリパーライフサイエンス社にお礼を申し上げたいと思います。
07/26: 日本発の再生医療技術による挑戦と創造
日本発の再生医療技術による挑戦と創造
再生医療といえば胚性幹細胞(ES細胞)、また京都大学山中教授らによって報告された人工多能性幹細胞(iPS細胞)がまず思い浮かぶのではなかろうか。一方で、倫理的な問題や安全性の確保など、実用化の道程はまだ長いとされる。そんな中注目を集めているのは、生物が体内にもともと持っている体性幹細胞だ。少々の傷なら塞ぎ、治してしまう。生物の再生能力の源泉である体性幹細胞に、あるアイデアを付加することで再生医療に役立てることを可能にした株式会社セルシードが、脚光を浴びている。
[細胞シート工学] シンプルだが革新的な再生医療技術
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長谷川 幸雄氏 (はせがわ ゆきお) |
1986年1月 |
東邦大学薬学部助手 |
1991年11月 |
ファルマシアバイオテク㈱(現GEヘルスケアバイオサイエンス㈱)研究開発室主任研究員 |
1992年05月 |
同社研究開発室長 |
1998年04月 |
アマシャムファルマシアバイオテク㈱(合併により社名変更。現GEヘルスケアバイオサイエンス㈱)シニアマネージャー、グローバルR&D 東京サイトヴァイス・プレジデント |
2001年05月 |
株式会社セルシード設立,代表取締役社長(現任) |
2008年10月 |
CellSeed Europe SARL President & CEO (現任) |
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「再生医療を実現したい。日本発の技術でそれを達成できるのなら喜びはひとしおだ。」インタビューの冒頭で、株式会社セルシードの社長を務める長谷川氏はそのように語った。細胞をシート状に培養し、生体に近い条件を再現する細胞シート工学の基礎は、東京女子医科大学の岡野光夫教授(同社取締役)らにより1990 年に開発された。
鍵は温度応答性ポリマーである。細胞培養用のシャーレにこのポリマーを処理する。ポリマーは細胞を培養する37℃では固体のままだが、32℃を境に液化する特性を持つため、わずか5℃の温度変化により細胞をシートのまま取り出すことができるのだ。従来の技術では細胞シートを取り出す際に酵素処理を行う必要があったため、細胞への障害が大きいことが問題となっていたが、同社の技術では細胞への障害が小さくて済むことが大きな特徴だ。この技術を用いた角膜再生上皮シートなどの再生医療用細胞シートの開発などの研究分野への応用を進めている。「非常にシンプルだけど再生医療に非常に大きな役割を果たす技術だ」。
[起業] 優れたアイデアを眠らせないために
長谷川氏が細胞シート工学に出会ったのは、同氏が外資系バイオ企業に勤めていた1995年頃。今でこそ再生医療に巨額の投資をするメガファーマも現れたが、当時は再生医療に本腰を入れる製薬企業はほとんどなかったという。「会社には何度も医薬品としての開発を提案したが、反応は薄かった。」と当時を振り返る。
この理由として、外資系企業において日本発の技術を研究開発する困難さもあるが、細胞シート工学で再生医療を実現するというアイデアには前例がないことも大きな理由であったと同氏は分析する。「誰かが始めたら後を追う動きが活性化する。日本のお家芸とも言えるそのスタンスでは日本発のアイデアは普及しない」。再生医療を実現したいという想いに人々が集い、株式会社セルシードは2001年に設立された。アイデアを眠らせてしまう構造から、一歩抜け出した瞬間だ。
[挑戦] 日本発の技術で世界中の患者を救う
セルシードには世界中の人々から毎日のように便りが届けられている。角膜に限ってみても日本国内だけで3千名の移植待機患者がおり、米国では年間4万件の角膜提供が行われている。再生医療の実現を待ち望む患者 は世界中に存在するのだ。「医薬品の開発は生命の本質に迫るので、時間も費用も莫大にかかってしまう。」歯痒 い思いが溢れる。現在開発中の角膜、心筋、食道、歯周組織、軟骨などは、移植を希望する患者が多く、かつ体性幹細胞が特定されている組織だ。理論的には体性幹細胞を採取できれば様々な組織の再生を実現出来る。しかしながら全ての体性幹細胞が特定されているわけではないため、現状では細胞シート工学を応用できない組織も存在する。折しも同じく日本発のiPS細胞に関する技術は日進月歩でメディアを賑わせている。iPS細胞の安全性や目的の細胞への分化技術が確立されれば、細胞シート工学と組み合わせることで再生医療の可能性が一気に広がる。「日本発の技術が世界中の患者に貢献する絶好の機会だ。多くの患者にこの治療法を届ける仕組みを作り上げたい。」
今年半ばにはフランスでの角膜再生上皮シートの治験が終了する予定という。セルシードという箱に集まった、アイデアを評価し、信じる人たちが再生医療という先人のいない世界を開拓し、世界にそのアイデアを提供しようとしている。2010 年3月16日、それは株式会社セルシードがジャスダックNEOに上場した日でもあり、再生医療の発展・普及を加速した、記念すべき日となるだろう。
株式会社セルシード |
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所在地 |
〒162-0056 東京都新宿区若松町33-8 アール・ビル新宿1F |
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設立 |
2001年5月 |
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上場市場 |
ジャスダック証券取引所NEO市場(7776) |
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事業内容 |
細胞シート再生医療事業、再生医療支援事業 |
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URL |
http://www.cellseed.com/ |
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お問い合わせ |
Tel 03-5286-6231 / Fax 03-5286-6233 問い合わせフォーム |
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07/25: 最先端再生医療を牽引する未来医療センターの現場
最先端再生医療を牽引する未来医療センターの現場
最先端再生医療を牽引す る株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの自家培養表皮ジェイス®に対して製造販売承認が厚生労働省から下り、日本国内で再生医療が現実のものとなり始めている。移植組織を扱う上で注意が払われる問題の1つがエンドトキシンの混入だ。現場でどのような対応がなされているのか、世界に向けた最先端の医療を進めている大阪大学医学部附属未来医療センターで再生医療の研究に取り組む名井准教授と藤井技官を訪ねた。
再生医療の最先端を行く未来医療センター
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CPC内部の様子 |
同じタイプの細胞調製室を4部屋完備し、日々再生医療の実現に向けた研究がおこなわれている。サンプルをコンピューターによって厳格に管理するなど、安全性を担保するための仕組みが何重にも施されている。 |
緒方洪庵が適塾を開いたのは江戸幕府の土台を揺るがした大塩平八郎の乱の翌年、1838年。日本でいち早く種痘の治療法の普及に努めた洪庵は、幕末日本における西洋医学の最先端を切り開いた。歴史に名を刻む多くの志士が学んだ適塾は、大阪大学医学部のルーツでもある。その流れは今でも大阪大学医学部に息づく。トランスレーショナルリサーチの実践の場として創設された未来医療センターは、現代医療の最先端を切り開くためのセンターといえる。
センターでは「未来医療」の開発が、2つの大きな枠で進んでいる。1つは既に実施例があるものの、一般に普及していない高度医療を実践・検証する「先端医療プロジェクト」。もう1つは大阪大学発の基礎研究を世界で初めて臨床応用することが目標の「未来医療プロジェクト」だ。両プロジェクトのもとで現在進められている13件の研究も含めて、これまで行ってきた研究の大半が再生医療に関連している。そのため、GMPに準拠した細胞培養施設(Cell Processing Center; CPC)をセンターが開設した翌年の2004年から稼働させた。CPCでは、高い水準で衛生管理されている4つの細胞調製室での培養が可能になっている。
実施成功例を積み上げる
「再生医療をいざ実施するとなると、患者さんの反応は、効果への期待と副作用への不安が五分五分という感じです。再生医療への信頼がまだ足りないのだと思います。実施成功例を増やして信用を高めていくことが重要です。」と名井先生が語るように、再生医療の普及には実施成功という形で信用を積み上げていく必要がある。今は新しい医療が立ち上がる黎明期であり、失敗は許されない。移植が原因で重篤な症状を引き起こすようであれば、臨床研究に協力してくれた患者にとって不幸であるだけでなく、再
生医療への信頼性も大きく損なわれ、医療の発展を志す医療関係者、そして何より未来の患者に対して大きな損失に繋がるのだ。そこで、センターではいち早く標準業務手順(Standard Operating Procedure;SOP)を制定し、それに則った治療が始まっている。
緊張感のある治療現場で、いま注目を集めているのがエンドトキシンである。エンドトキシンはグラム陰性菌の細胞壁を構成するリポポリサッカライドで、敗血症やショックを引き起こす有害物質として知られている。日本薬局方では注射剤のエンドトキシンの基準値が定められているが、再生医療においては基準値が定められていない。センターではSOPで一定の基準を設けて、基準値をクリアしていない細胞に関しては再生医療に使わないという方針を採っている。手探りの状態ではあるが、この積み重ねがこれからの再生医療の標準へと繋がる。
迅速さと信頼性とコンパクトさと
2004 年の開設以来センターでのエンドトキシンの測定試験は300件以上、細胞移植は30件を超える。これまでエンドトキシンによる副作用が1件も起こっていないのは、センターのSOP基準が安全を担保してきている1つの証と言える。この安全性を支えるのが簡便で正確なエンドトキシンの測定だ。エンドトキシン測定装置として、現在評価中なのがEndosafe®-PTS™ (和光純薬工業株式会社販売)である。「エンドトキシンの測定において従来法で90 分かかったところがEndosafe®-PTS™では15分で済みます。検査の緊急性が高い再生医療分野では非常に有効な測定手段だと考えています。」と藤井さんは語る。測定限界に関しても従来法と同等で、十分な再現性も得られるため、医療現場では非常に重宝するのだという。15分で検査を完了して、細胞移植というスキームを将来的に構築できれば安全性も担保でき、患者への負担も減らせる。
Endosafe® -PTS™
実験台の上で場所をとらないのが大きな特徴の一つだ。
「再生医療に関するセミナーに参加した際に、Endosafe®-PTS™を日常的に使用しているという施設が多くありました。限られたスペースでも簡単に測定出来る点が評価されているのだと思います」と語ってくれた藤井さんは、Endosafe®-PTS™を実験台の引き出しから取り出して見せてくれた。コンパクトさと迅速さ、もちろん正確さを兼ね備えたEndosafe®-PTS™が再生医療の現場に安全性という光をもたらしている。「再生医療はあと20年もすれば、当たり前に普及した医療になっていると思います。そこに向
けて、日本から安全性基準を含めた研究成果を打ち出していきたい。そして成果に基づいて産業を育て、ひいては再生医療も大きく育てていきたいですね」と語る名井准教授をはじめ、未来医療センターのスタッフがこれから世界に向けてどのような成果を発表していくかが楽しみである。また、安全性の評価基準がいち早く作られることが待たれる。その中でEndosafe®-PTS™が果たす役割は大きいはずだ。
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名井 陽 准教授 |
(みょうい あきら) |
医学部附属病院未来医療センター病院教授・副センター長。大阪大学医学研究科病理系専攻博士課程修了、大阪大学医学部附属病院・医員(研修医)、関西労災病院、川崎病院、大阪大学助手、同大学医学部附属病院未来医療センター准教授、副センター長を経て、現職。研究サイドから未来医療センターに関わり始め、現在も骨関連の医療を中心に活躍する。 |
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藤井 妙恵 検査技師 |
(ふじい たえ) |
未来医療センターで移植用細胞の検査などに従事する。現場のプロト コルを確立する中で中心的な役割 を果たしている。 |
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大阪大学医学部附属病院未来医療センター |
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所在地 |
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-15 大阪大学医学部附属病院未来医療センター
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設立 |
2003年4月開設 |
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事業内容 |
トランスレーショナルリサーチの実践の場を目標に、再生医療、遺伝子治療など先進的な医療に取り組むとともに、産学連携ラボを設けて企業との共同研究も積極的に進める。さらに、内視鏡手術のトレーニング装置などを備え、定期的に研修も行うことで、先端医療を実施できる人材の育成にも力を入れる。
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URL |
http://www.hp-mctr.med.osaka-u.ac.jp/
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●Endosafe®-PTS™に関する問い合わせ
和光純薬工業株式会社 |
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本 社 |
Tel:06-6203-2759(バイオメディカルシステム部
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東京支店 |
Tel:03-3270-8124(バイオメディカルシステム部) |
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