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国内最安プロテオーム解析のGenomine社CEOに聞く

日本に進出したGENOMINE社の質量分析サービス

中国をはじめとするアジアの鉄鋼メーカーの台頭が著しい昨今だが、韓国のPOSCOもその1社だ。2009年度の粗鋼生産で世界第4位を誇る同社は韓国屈指の鉄鋼メーカー。その同社が中心になって設立した浦項(ポハン)工科大学校は韓国の理工系人材を多く輩出する。Genomine社はそんな浦項工科大学校発のベンチャー企業だ。診断マーカー開発などで培ったノウハウを武器に展開する質量分析サービスについて、現地に赴いて話を伺ってきた。

Genomine社CEOのDong Su Kim氏(右)と株式会社リバネス代表取締役の高橋修一郎(左)
Genomine社には日本語に対応できる韓国人スタッフもおり、訪問当日は英語、日本語を交えながらサービスについて深い議論を行うことができた。

 

診断マーカー開発ベンチャー

飛行機でソウルの金浦空港をたって約50分で浦項空港に到着する。空港を車で出発するとすぐに、道路の両側に製鉄所が立ち並ぶ風景が広がる。世界第4位もうなずけるスケールだ。さらに車を20分ほど走らせると山を切り開いた中に大学の建物が見え始める。浦項工科大学に到着だ。真新しい研究棟が建ち並び、研究に力を入れている様子がうかがえる。そして、大学の敷地を抜けるとGenomine社に到着する。地上3階建てのビルにオフィスと研究室を設ける同社が設立されたのは1999年。できてまだそれほど年月が経っていないベンチャー企業だ。 しかし、この間に着実に技術を生み出し、特許の件数は国内、海外を合わせると20 件に上る。さらに出願段階のものまで含めるとその数は100 件を超える。例えば、植物の開花時期を調節する遺伝子とそれを利用した開花調節の手法や腎細胞がんの診断キットなど、植物からヒトまでプロテオームをベースにした研究開発で実績をあげている。

 

低価格の原動力

Genomine社のサービスは、例えばMALDI-TOF/MSによるペプチドマスフィンガープリント(以下PMF)解析で21,600円(日本国内定価)ときわめて安い。しかも、ゲルさえ送付すれば、ゲル内消化から結果の提出までをこの価格で行ってくれる。これは悪い機械を使っているという意味では決して無い。MALDITOFはETTAN MALDI-TOF Pro (GEHealthcare)、LC-MS/MSにはLCQ DecaMax (Thermo Scientific) およびQSTARXL (Applied Biosystem) を使用している。もともとこれらの機器は診断マーカーの開発などを目的として購入したものだった。同社は空いているマシンタイムをうまく活用し、質量分析サービスを開始した。そのため解析費用には機器のコストが上乗せされない。これが安さの秘密の1つだ。

 

幅広いサービス

韓国内では年間3,600件以上のサービスを提供する同社は、PMFによるタンパク質解析をはじめ、2次元電気泳動によるタンパク質発現解析、リン酸化タンパク質の同定、糖タンパク質の同定など、タンパク質の解析において必要なサービスをそろえる。さらに、データ提供や検出タンパク質のデータベース検索でも柔軟な対応をみせる。データ提供の場合、こちらが必要とすれば、検出ピーク全てのデータを提供する。また、データベース検索ではウェブデータベース、社内ローカルデータベース両方で検索を行っているが、必要とあれば、ローカルデータベースのみでの検索も可能だ。日本向けには日本語の登録サイトを構築している。こうした顧客のニーズに応じた細かな対応も同社の利用件数に反映されていると言えるだろう。タンパク質の質量分析は価格面からハードルが高い場合もあるが、Genomine社のサービスはそこに1つの新しい道を提供してくれるはずだ。

 


<参考資料> 【語句説明】

プロテオーム

ある組織や生物種、細胞などに存在しているタンパク質の総体を指す言葉です。組織間や細胞間でプロテオームを比較することにより、生命現象を総合的に理解することができます。日本ではタンパク3000プロジェクト等で網羅的な解析が試みられてきました。なお、プロテオーム研究は基礎研究だけでなく、病気のシグナルや原因の解明に向けて、臨床現場でも行われるようになってきています。

質量分析法

質量分析法(MassSpectrometry)とは、試料の質量電荷比を求めるときに使用される分析法です。高電圧をかけた真空中で試料をイオン化すると、静電力によって試料は装置内を飛行します。飛行しているイオンを電気的・磁気的な作用等により質量電荷比に応じて分離し、その後それぞれを検出することで、質量電荷比を横軸、検出強度を縦軸とするマススペクトルを得ることができます。既知物質の同定や未知物質の構造決定にはきわめて強力な手段となるため、有機化学や生化学の分野で非常に多用され、また重要な分析法となっています。

MALDI-TOF

ノーベル賞を受賞した田中耕一さんが開発した、タンパク質のイオン化法です。これにより、分子量の大きなタンパク質の質量分析が可能となり、医学や生物学、特に生化学分野を中心に非常に大きな発展をもたらしました。分析に必要なサンプル量がごく微量で良いという利点があり、フェムトモル(fmol)オーダーから測定が可能とされています。